<登場人物・キャスト>
語り手:奈良岡朋子/おしん:田中裕子/竜三:並木史朗/源右衛門:今福将雄/染子:日向明子/茂子:古館ゆき/山口ミサ:渡辺康子/中本:小池栄/留吉:中島元/布地屋の男/秋本学/梅子:大畑ゆかり/糸子:中尾和子/たか:渡辺美佐子
<あらすじ>
世界大戦後の不況の中で、女性の間でも活動的で費用も安くつく洋装時代が来ていたが、それまで和服の多かった子供達が洋服を着始めたのは大正11年頃であった。おしんはその子供服に目をつけ、その仕立てと販売を田倉(たのくら)商会の新しい商売にしようと着々と準備を進めていた。
田倉羅紗(ラシャ)店は大工が来て改装が始まっている。
しかし当の大工にも、源右衛門にもその改装の具体的な意味は理解できていなかった。
竜三が出勤際、出掛けに源右衛門が何事か竜三に話しかけている。それを見ておしんはやれやれといった表情である。
その直後にどたどたとおしんの方に寄ってきて何事かを言わんとするので、おしんは機先を制した。
「源じい。そんなに心配なの? 源じいは、私がたった一枚作った洋服を見て旦那様が何が分かるって言いたいんでしょ? でもねえ、旦那様だって何年もこの世界で苦労していらっしゃるわけでしょ」
「そりゃそがんかも知れんばってん」
「いや私も、本当のことを言えばびっくりしたの。だってね、あの見本の洋服見せただけでたちまち原価計算が出来て、それでいくらのもうけを見て何日間の間にどれぐらい品物が売れれば商売として成り立つかどうかということまで全部、あっという間に計算がおできになったのよ。私、さすがだなあって感心しちゃった! 無駄に田倉商会やってらした訳じゃないのよね。見直しちゃった。私、このままずっとあの人についていこう。あの人についていったら間違いがないんだなってつくづくそう思った」
「奥様がそがんお思いになっとならば、じいはもう何も言うことはなかですばい。坊ちゃまはあれでもだてに苦労ばしとんさっとちゃなかとですけん。あれでも一時は若かとに田倉商会のあるじとして、この業界で経営手腕ば振るわれたこともあったとですばい。その坊ちゃまが承知しとんさったとないば……」
「そりゃね人には運不運があって、不景気の時なんかは人の力ではどうしようもないこともあるんだと思うの。この店だって果たして思惑通りいくかどうか分からないわよね。でもせっかくこれだけの地盤とお店があるんだもん。ほっておくのはもったいないし、何かこう張り合いっていうのかな、そういうもの持ってないと人生つまんないんじゃないかと思ったの」
「はい。坊ちゃまと奥様がそがんお覚悟でおんさっとないば……」
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語り手:奈良岡朋子/おしん:田中裕子/竜三:並木史朗/源右衛門:今福将雄/染子:日向明子/茂子:古館ゆき/山口ミサ:渡辺康子/中本:小池栄/留吉:中島元/布地屋の男/秋本学/梅子:大畑ゆかり/糸子:中尾和子/たか:渡辺美佐子
<あらすじ>
世界大戦後の不況の中で、女性の間でも活動的で費用も安くつく洋装時代が来ていたが、それまで和服の多かった子供達が洋服を着始めたのは大正11年頃であった。おしんはその子供服に目をつけ、その仕立てと販売を田倉(たのくら)商会の新しい商売にしようと着々と準備を進めていた。
田倉羅紗(ラシャ)店は大工が来て改装が始まっている。
しかし当の大工にも、源右衛門にもその改装の具体的な意味は理解できていなかった。
竜三が出勤際、出掛けに源右衛門が何事か竜三に話しかけている。それを見ておしんはやれやれといった表情である。
その直後にどたどたとおしんの方に寄ってきて何事かを言わんとするので、おしんは機先を制した。
「源じい。そんなに心配なの? 源じいは、私がたった一枚作った洋服を見て旦那様が何が分かるって言いたいんでしょ? でもねえ、旦那様だって何年もこの世界で苦労していらっしゃるわけでしょ」
「そりゃそがんかも知れんばってん」
「いや私も、本当のことを言えばびっくりしたの。だってね、あの見本の洋服見せただけでたちまち原価計算が出来て、それでいくらのもうけを見て何日間の間にどれぐらい品物が売れれば商売として成り立つかどうかということまで全部、あっという間に計算がおできになったのよ。私、さすがだなあって感心しちゃった! 無駄に田倉商会やってらした訳じゃないのよね。見直しちゃった。私、このままずっとあの人についていこう。あの人についていったら間違いがないんだなってつくづくそう思った」
「奥様がそがんお思いになっとならば、じいはもう何も言うことはなかですばい。坊ちゃまはあれでもだてに苦労ばしとんさっとちゃなかとですけん。あれでも一時は若かとに田倉商会のあるじとして、この業界で経営手腕ば振るわれたこともあったとですばい。その坊ちゃまが承知しとんさったとないば……」
「そりゃね人には運不運があって、不景気の時なんかは人の力ではどうしようもないこともあるんだと思うの。この店だって果たして思惑通りいくかどうか分からないわよね。でもせっかくこれだけの地盤とお店があるんだもん。ほっておくのはもったいないし、何かこう張り合いっていうのかな、そういうもの持ってないと人生つまんないんじゃないかと思ったの」
「はい。坊ちゃまと奥様がそがんお覚悟でおんさっとないば……」
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